根管治療
根管治療とは
根管治療とは、歯の内側にある神経や血管(歯髄)に炎症や感染が生じた際に行う治療法です。虫歯が進行して神経まで達したり、歯に強い衝撃が加わったりすると、歯の内部にある歯髄が炎症を起こしたり、細菌感染を引き起こしたりします。このような状態に至ると、ズキズキとした強い痛みや冷たいものがしみるなどの症状が現れます。
根管治療では、この痛みの原因となっている炎症を起こした歯髄や感染した組織を取り除き、きれいに消毒して、専用の材料で密閉します。これにより、痛みを取り除くと同時に、歯を抜かずに残すことができるのです。
歯髄は一度炎症を起こすと自然に治ることがほとんどないため、根管治療は非常に重要な治療法です。治療を行わないと、痛みが継続するだけでなく、炎症や感染が周囲の骨や組織に広がり、より深刻な問題を引き起こすこともあります。

根管治療はこんな方におすすめ

根管治療は以下のような症状や状態の方におすすめです。
虫歯が神経まで達してしまった方
虫歯が進行してC3と呼ばれる状態にまで至ると、日常生活に支障が出るような激しい痛みを感じることがあります。
こうした場合は根管治療を行うことで痛みの原因を取り除くことができます。
歯の神経が炎症を起こしている方
冷たいものや熱いものがしみる、噛むと痛む、ズキズキと自発的に痛むなどの症状がある場合、歯髄炎(歯の神経の炎症)が疑われます。
歯髄炎は放置すると頭痛の慢性化や顎の腫れ、歯の変色などに至るケースもあります。
歯の根の周りに膿がたまっている方
レントゲン検査で歯の根の周りに黒い影(膿がたまっている状態)が見られる場合、根尖性歯周炎という状態です。痛みを伴わないこともありますが、放置すると骨が溶けてしまうリスクがあります。
歯の神経を取った後の再治療が必要な方
過去に神経を取る治療を受けたものの、再び痛みや腫れなどの症状が出てきた場合、根管内が十分に消毒されていないか、密閉が不十分である可能性があります。
根管治療のメリット

自分の歯を残すことができる
根管治療の最大のメリットは、問題のある歯を抜かずに残せることです。自分の歯は、どんな優れた人工物よりも機能的で、周囲の組織との調和も優れています。
自分の歯を残すことで、以下のようなメリットがあります:
- 自然な噛み心地と感覚を保てる
- 周囲の歯への負担を防ぐことができる
- 顎の骨が痩せるのを防ぐことができる
- 見た目の自然さを保つことができる
特に前歯などの目立つ部分の歯は、自分の歯を残すことで自然な見た目を保つことができます。また、歯を失うと骨が痩せてしまい、顔の形が変わることもありますが、根管治療によってこれを防ぐことができます。
痛みを取り除くことができる
歯の神経が炎症や感染を起こすと、強い痛みを伴うことがあります。
根管治療では、痛みの原因となっている炎症を起こした神経や感染した組織を取り除くため、これらの症状を効果的に取り除くことができます。治療後は、痛みから解放されて快適な生活を送ることができるようになります。
また、鎮痛剤での一時的な痛み止めとは異なり、根本的な原因を取り除くため、持続的な痛みの緩和が見込めます。
中長期的に見ると費用を抑えることができる
根管治療は抜歯よりも初期費用は高くなることがありますが、中長期的に見れば費用を抑えることができる場合があります。
歯を抜いた後は、その部分を補うために入れ歯やブリッジ、インプラントなどの処置が必要になります。これらの治療は根管治療よりも高額になることが多く、また定期的なメンテナンスや将来的に作り直しになる可能性なども考慮すると、トータルコストは大きくなる傾向があります。
一方、根管治療で自分の歯を残すことができれば、適切なケアを続けることで長期的に機能することが期待できます。将来的な歯の喪失による追加の治療費を考えると、根管治療は経済的にも優れた選択肢と言えるでしょう。
根管治療のデメリット

治療に時間を要する
根管治療のデメリットを挙げるとすれば治療にある程度の時間を要することが挙げられます。
基本的には複数回の通院が必要です。歯の状態や根管の複雑さによっては、3〜5回程度の通院が必要になることもあります。また、1回の診療時間も長くなることがあり、60分以上かかる場合もあります。
治療期間が長引く理由は、以下のようなものがあります。
- 炎症や感染を完全に取り除くには時間がかかる
- 根管内を完全に密閉するためには慎重な作業が必要
- 投薬期間を設けることでより確実な治療効果を得られる
- 症状の経過観察が必要な場合がある
このように時間がかかるというデメリットはありますが、急いで治療を終わらせると再発のリスクが高まるため、適切な治療期間を設けることが重要です。
当院の根管治療の流れ
当院では、患者さまの歯を最大限に守るため、精密な根管治療を提供しています。治療の流れは以下のようになります。
- STEP
診査・診断
まずはレントゲン撮影や検査を行い、歯の状態や神経の状態を確認します。痛みの原因や症状の程度を見極め、根管治療が適切かどうかを判断します。 - STEP
麻酔と防湿
痛みを感じないように適切な麻酔を行います。また、唾液や細菌が入らないようにラバーダム(ゴム製のシート)で歯を隔離します。 - STEP
根管内の清掃と形成
専用の器具を使って根管内の神経や感染した組織を取り除き、根管の形を整えます。同時に、根管内を消毒液で洗浄し、細菌を取り除きます。 - STEP
薬剤の貼付と仮封
必要に応じて抗菌作用のある薬剤を根管内に貼付し、一時的に歯を封鎖します。細菌を完全に除去するために、この状態で1〜2週間程度経過観察を行うことがあります。 - STEP
密封
症状が改善し、根管内が十分に消毒できたことを確認したら、専用の機材で根管を密閉します。これにより、細菌の再侵入を防ぎます。 - STEP
被せ物をする
根管治療後の歯が折れるリスクを避けるため、被せ物(クラウン・インレーなど)による修復を行います。歯の状態に応じて、適切な修復方法をご提案します。
治療完了後も、経過観察のために定期的な検診をおすすめします。早期に問題を発見することで、再治療のリスクを減らすことができます。
垂直加圧充填法について
当院では、より効果的な根管治療を提供するために、「垂直加圧充填法」という高度な技術を取り入れています。垂直加圧充填法は別名オブチュレーション法とも呼ばれています。
垂直加圧充填法は、根管内を緻密に充填する方法の一つで、従来の側方加圧法と比べてより確実に根管を密閉することができます。
加熱したプラガー(専用の器具)を使って、ガッタパーチャという根管内の空間を埋めるゴム状の物質を垂直方向に加圧しながら根管内に充填していきます。
従来の側方加圧法では、メインとなるガッタパーチャの周りに複数の副ポイントを挿入して充填していましたが、垂直加圧充填法ではガッタパーチャを熱で柔らかくし、根管の複雑な形状に合わせて三次元的に充填することができます。
垂直加圧充填法は技術的に難しい面もありますが、特に難しい症例や再治療の場合には、この方法によって治療成功率を高めることができます。
治療法の選択については、歯の状態や症状に応じて最適な方法をご提案いたします。
垂直加圧充填法についてご質問がございましたら、お気軽にお尋ねください。
